マジックの練習方法まとめ

マジシャンのための練習マニュアル

最近、マジックサークルに続々と新入生が入ってきてくれて、嬉しいです。彼らには、マジックの楽しさを知って興味を持ってもらうと同時に、色々な人を楽しませることができる「エンターテイナー」になってほしいです。

今回の記事のテーマは「マジックの練習方法」について書きます。2年間、プロの方々、アマチュアの方々から多くの話を聞き、さらに様々な文献を読んだり、自分で考えてきた内容を16にまとめてみました。

クロースアップマジック・サロンマジックの練習方法であることはご了承ください。

マニュアルその1:技法を練習する

クロースアップマジックやサロンマジックにおいて最も重要なものは何でしょう?

セリフ?その人のキャラ?もしくはミスディレクション?

どれも違います。重要なのは「マジック」が「マジック」であるために必要な「技法」を徹底的に身につけることです。

カードマジックを一例にあげるならば、カードの基本的な扱い方(手癖・フラリッシュ)、ギミックの活用や処理方法、その他マルチプルリフトといったシークレットムーブなどが当たります。

マジシャン側の視点から見て最も「こいつ・・・できる!」と思うマジシャンは、持っている素材(カードやコイン)の扱いが非常に綺麗で、洗練されています。

一つの技法を、徹底的に、これほどか、というまで練習しましょう。

相手に気づかれないような些細な内容であったとしても、一つのマジックとして見た時に、その練習は無駄にはなりません。さらにプロのマジシャンから聞いた話を引用します。

プロっていうのは、いついかなる時でも、同じクオリティでお客さんに商品(=マジック)を届けなければならないんだ。たとえ自分が高熱だったとしてもね。そんな時に、手元が狂うようなレベルじゃプロとは言えないんじゃないの?

(とあるプロマジシャンより)

もちろん、プロである以上体調管理をするのは最低限なのですが、体調が悪い時や、極度の緊張が襲う場面でもマジックを演じなければならないことがあります。

そんな場面でも、いつも通りのマジックを演じ切れる人こそ「プロ」なのです。また、とあるアマチュアマジシャンと話していた時の言葉です。

技法があったら、観客の無茶ブリに全部対応することができるぜ?それって究極の「観客の求めるマジック」じゃね?(とあるマジシャンより)

マジックをやっていてよく言われる内容の一つが「⚪︎⚪︎やってよ〜」という言葉。

上のマジシャンは、技法によって全て解決しようとしていました。彼の言う内容も納得ですが、これに加えて

リカバリー」に必要なのが技法だと思います。

とある結婚式でマジックをしていた時のこと。

やってはならないミスをやってしまったことがあります。

どうにかしてミスしたことをカバーできないか、必死に頭の中で模索しましたが、結局その時助けてくれたのは、長年かけて積み上げてきた一つの技法でした。

勘違いしてはいけないのは

技法はマジックのための手段であり、マジックの目的でない。

ということです。これらの内容をうまく表した松田道弘氏の言葉を最後に一つ引用しておきます。

カード奇術の世界は、技法の宝庫ともガラクタの山とも言えます。マニアがまず幻惑されるのはその数の多さ、種類の豊富さです。あらゆる技法をマスターせずにおくものかという決算は、ほとんどの熱心なマニアに共通しています。

マニアがいつの間にか技法のコレクターになってしまうのです。

(松田道弘氏より)

マニュアルその2:鏡を見て練習する

上で技法の練習の重要性について説明しましたが、多くのマジシャンが行う技法の練習方法として「鏡を見て練習」という方法があります。

確かに、非常に効果的な練習方法であるのですが、メリットとデメリットがあることを理解しましょう。

鏡で練習することのメリット

  • 手軽に自分の技法をリアルタイムで確認できる。
  • 技法一つについてより精度を高めることができる。

鏡で練習することのデメリット

  • 実際にお客さんから見た時の像と異なる。
  • 一部分しか見れない(全体像に目が行きにくい)。
  • 角度に弱い
  • 何度も見直せない(反省点が浮かび上がりにくい)

まずは、メリットから説明しましょう。

鏡で練習することのメリットとは、何よりもまず手軽で、リアルタイムで自分の技法を確認することができることでしょう。

そこに鏡があれば練習できますし、セリフと一緒に練習することも簡単です。

さらには「この技法の時トランプの重なり具合は・・・」といった風に、非常に厳しい視点で技法を鍛錬することができるのもメリットの一つです。

しかし、鏡で練習するデメリットも存在します。

一つに、鏡というのは実際に見たものとは左右対称になっていることから、実際にお客さんが見た時の印象とは異なることを理解しておかなければなりません。

鏡で見た時の自分の顔と、写真で見た時の自分の顔が異なるのと同じです。

さらには、鏡では手元の一部分に自分の視点が集中してしまうため、全体像がよくわかりません。言い換えれば様々な角度から見た技法の練習が難しい、ということになります。

加えて、何度も見直せないために、鏡を見て練習すること自体がただの「作業」になっている可能性があります。

鏡で練習することは非常に有意義な練習方法ですが、鏡から見たあなたの像と、実際にお客さんの目に映るあなたの像は異なることを理解しておきましょう。

マニュアルその3:動画を撮る

「鏡で練習する」デメリットを解消してくれるのが、動画で撮影することによる練習です。鏡で練習するより手軽さは減りますが、その分のメリットはあります。

まず、鏡とは異なって、動画に映る自分は観客の目に映る自分と同じであること。

さらには、様々な視点から自分の演技を確認できること。

そして何より何度も見直せる、というメリットがあります。

動画で確認すべき箇所は非常にたくさんありますが、ここは本から引用しましょう。

  • 手の動き
  • 体の動き
  • 話し方
  • 目線
  • 秘密の動作(シークレット・ムーブ)

→これらの事項でギコチナイ部分や、よくないと思われる部分を、何度も繰り返し、そして批判的な目で見る。

(『マキシマム・エンターテイメント』p.42~44 引用・要約 )

技法だけでなく、セリフや目線といった演技の全体像まで確認できるのは、動画以外できません。iPhoneで動画撮影するなんて簡単です。どうぞ試してみてください。

マニュアルその4:ミスディレクションを鍛える

ミスディレクションをマジックに組み込むことによって、クロースアップマジックは華やかなものになります。

一概にミスディレクションと聞くと「視線を外す」という風に思われがちですが、視覚だけでない様々な知覚に影響を与え、相手の判断を誤らせることを指します。

それは音であったり、色であったり、はたまた時間の流れ、論理の矛盾も含みます。それらを駆使すれば、よりマジックが楽しくなります。

マジシャンの視線の先に観客の視線が集まる

下手なマジシャンは、前を見ずに手元ばかり見てマジックを演じます

そうではなく、きちんとお客さんと視線を合わせ、会話を楽しみながらマジックを演じることができてはじめて、ミスディレクションが成功します。

日本人は目を合わせるのが苦手だと言います。

そういう意味では「にらめっこ」なんて良い練習方法だったりします笑

ここでもう一つ、ミスディレクションと聞けば、それ自体がマジックの核となっているもの(例えばCard under the box など)を思い浮かべがちです。

しかし、ミスディレクションを普段使わないようなマジックこそ、ミスディレクションを加えてみてください。

シークレットムーブへの意識を完全に観客の意識から逸らすことで、より不思議な手品を演出することができます。

より細かいミスディレクションの研究については、ファイブポインツやDariel Fitzkeeの『Magic by Misdirecton』などを参考にしてみてください。

マニュアルその5:セリフを工夫する

淀みなくスラスラとセリフが出てくるぐらいは準備しておくべきです。

加えて、できればどこのセリフを強調するのか、どこで間を置くのか、どこでセリフに緩急をつけるのか、ということまで考えると印象が変わります。

セリフの重要性は、漫才師の方々を見ればわかりやすいかと思います。

彼らは、セリフを練りに練り、そして完全に暗記しています。

ここで一つ重要なのは

セリフは練られたものであっても、自然体でなければならない

ということです。

今現在成功を収めているパフォーマー、役者、マジシャン、コメディアンたちは、毎晩毎晩、ほぼ判で押したように同じセリフを喋り続けているのあということ。こういった人々は、シッカリ稽古して、言い慣れた言葉でも新鮮に聞こえる技術を習得しているわけです。

また、状況に応じて予定していたセリフから意識的に離れることが可能なのは、とりもなおさず、言うべき言葉を頭に叩き込んであるからこそ、だからです。「いざとなったら、十分に考え抜いて作ったセリフに逃げ帰ることが出来る」という安心感があるわけですから。

『マキシマム・エンターテイメント』第3部p.129より引用

マニュアルその6:第1印象を磨く

観客の前に立つ「パフォーマー」であるならば、第1印象を気にするべきです。

「この人カッコイイ、この人の手品を見て見たい!」

そう思わせななければいけません。

シャツにシワがないか、サイズ感はあっているのか、顔に目ヤニがついていないか、唇がひび割れていないか、歯に青ノリが付いていないか・・・

マジシャンに重要なのは手先のテクニックでも、喋りでもなくて、まず「外見」だ。

(とあるプロマジシャンより)

マニュアルその7:拍手を貰う技術を磨く

どこでマジックが一番盛り上がるのか、そしてクライマックスを自分自身で理解しましょう。

最も簡単なのは、演技の終わりに拍手を貰うことです。

自然と拍手が出てくるのが理想ですが、拍手を貰うためのテクニックは多く存在します。

(cf:『マキシマム・エンターテイメント』p.286 スタンディングオベーション)

マジックがそれほど魅力的でなくても、拍手が大きければ「なんとなく」凄いマジックを見た気持ちになります

そして、その拍手を聞いた観客は「なんだ、凄いマジシャンがいるぞ」と思い、「あなたのマジック見せてほしい!」と言われます。

さらには、ビジネス的な視点から見ても、イベントの主催者から見れば拍手は「イベントが盛り上がっているか」の指標になるので、拍手が大きければ大きいほど、次に仕事がもらえる確率が上がります。

マニュアルその8:事前準備を怠らない

事前にお客さんにどのようなマジックを見せるのか、そしてそのためにキチンと練習を重ねたり、仕掛けや小道具を準備しているだけで、多くのマジシャンに差別化できます。

何も準備をせず、アドリブでマジックをやるのも一つの醍醐味だとは思いますが、できる限り準備ができていた方がグダグダになる可能性は下がります。

備えあれば憂いなしです。

マニュアルその9:好きなマジシャンを見つける。

尊敬するマジシャンがいて、その理由が明確であれば、自分の進むべき方向性が明らかになります。

私のサークルで「デビッド・ストーン」というマジシャンが好きなメンバーがいますが、入部当初最も不器用・口下手だったにも関わらず、彼のマジックを延々と見て研究し、今ではサークル内でトップクラスになるほど急成長しました。

尊敬するマジシャンがいない人は、色々なマジシャンの演技を見て、好きなマジシャンを見つけましょう。

マニュアルその10:様々なマジックを覚えて、得意なマジックを極める

マジックのネタは知っておけば知っておくほど良いです。

とりわけ、最近のクロースアップマジシャンに多いのは、カードならカード、コインならコインだけ、といった風に、一つの素材に固執しています。

もちろん、得意なマジックを持っていることは素晴らしいのですが、様々なマジックを知った上で、自分の得意分野を見つけるべきです。

そうすれば、自分の得意な分野に、違う分野のマジックを組み合わせることができますし、隠れた得意分野が見つかるかもしれません。

『そもそもプロマジシャンというものは』に書かれているように、自分が得意とするマジック、普段演じるマジックというのは、プロでも5つ持っていれば良い方です。

50の一部にウケるマジックを知っているよりかは、5つ万人にウケるマジックを徹底的に練習した方が、必ず上達します。

マニュアルその11:見せる相手を分析する

自分の見せるマジックが果たして、マジシャンに向けたものであるのか、それとも一般的に向けたものであるのか、年齢はどのぐらいか、男女差などなど・・・

初対面の人であっても「この人にはこういったマジックを見せたほうがよさそうだ」という推測ができれば、ウケやすくなりますよね。

相手を分析し、何を求めているのかを判断する洞察眼を身につけましょう。

マニュアルその12:あらゆる人に見せる

見ず知らずの人にマジックを見せるのは怖いし、勇気のいることです。

しかし、マジックはあらゆる人に見せることで初めて上達します。

なぜなら、人によってマジックを見る視点というのは異なるからです。

そして、一般客だけでなく、マジシャンにもマジックを見せるべきです。

マジシャンから見た視点も、時に自分のマジックを何倍にも上達させることがありのです。

マニュアルその13:毎回、反省する

観客からウケなかったのは、観客が悪いのではなく、あなたが悪いのです。

どうすればもっと観客を喜ばせることができたのか、小一時間でも考えて、ノートにまとめておく、この作業をするとしないとで、大きな差が出ます。

マジックを始めたての人は、観客からの反応が気持ちよくて、ゲリラ的にマジックを披露しがちです。

もちろん、見せる回数を増やすのは良いことですが、1回1回の演技をもっと大切にして、よりよい演技をするにはどうすればよいのかを考えるようにしましょう。

量より質、ということですね。

マジックのショーを終えて、ニュースや他人の作った楽曲を聞く代わりに、自分自身のショーについて考えるのです。自分が舞台に立っていたときの様子を、できるだけたくさん頭の中で再生してみるのです。

どんなネタがウケたのか?どんなネタがウケなかったのか?この先も使えそうな、気の利いたアドリブが口をついて出てきたのかどうか?

このように考える過程で得られた「情報」は金にも勝ります!

(『マキシマム・エンターテインメント』p.292 事後検討 より引用 )

マニュアルその14:マジックをできる限り、見せない

「見せない」という意味に、次の内容を付け加えればどうでしょう。

「見せて!と言われるまで、見せない」

マジックは見せすぎない方がよいです。

あまりに多く見せすぎると、お客さんはお腹がいっぱい。

次にマジックを見る気が失せるわけです。

たくさん見せるのではなく「まだもう少し見たい・・・」

という所で止めておけば、次に会った時にも「見せて!」と言われる可能性は上がりますよね。

マジックを見せたい気持ちはわかりますが、引き際というものが大切です。

マニュアルその15:自分の人間性(キャラ)を伝える

マジック問わず、あらゆる芸能の終着点が、自分の存在を芸能によって表現することだと私は考えています。

ギターで自分の表現したい音を奏でる、絵で自分の気持ちを表現する・・・

手品で、自分という存在を表現することができれば、誰にも勝るマジシャンになるでしょう。プロの方々というのはその域に達している方がほとんどです。

重要なのは「自分が演じていて楽しい」マジックこそ、自分のキャラが最も伝わるのであり、演じていて楽しくないマジックは自分のキャラと合っていないと思います。

あなただけのマジック、あなたにしかできないマジックを目指しましょう。

まとめ

長くなりましたが、今までの練習マニュアルをまとめておきます。

  1. 技法を練習する
  2. 鏡を見て練習する
  3. 動画を撮る
  4. ミスディレクションを鍛える
  5. セリフを工夫する
  6. 第1印象を磨く
  7. 拍手を貰う技術を身につける
  8. 事前準備を怠らない
  9. 好きなマジシャンを見つける
  10. 様々なマジックを覚えて、得意なマジックを極める
  11. 見せる相手を分析する
  12. あらゆる人に見せる
  13. 毎回、反省する
  14. マジックをできる限り、見せない
  15. 自分の人間性(キャラ)を伝える

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!

参考書籍・URL

→この記事に書いてあることが、私なんかでなくプロの視点から、話口調でまとめられています。

→プロのマジシャンが気をつけていることなど。

→マジシャン視点から見た、観客の盛り上げ方

→ Lesson103『手品で稼ぐ』より

→ マジックの本ではありませんが、自分を表現する、という面で。

マジェイアの魔法都市案内

→非常にためになるお話がまとまっています。

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