ロボットはマジシャンにとってかわるのか ~魔法と科学の第二次戦争~

手品×ITの可能性

前回のマジックハラスメントの記事は、たくさんの人に読んでいただき、光栄です。最近は、手品を演じるというよりかは、「そもそも手品って何だろう」とか

「手品とオカルト」とか、「手品が歴史に与えた影響」みたいな

少し離れた位置から楽しむことが多くなってます。

こういった広い楽しみができるのも手品の良いところかもしれませんね。

とはいえ「このままじゃいけない!」と思いながら、ターベルコース(手品の百科事典)をぼーっと眺めていると、数理マジックの目次がありまして、これが面白い。

というのも、学校でR言語といったプログラミングを用い、統計解析を行う講義があったのですよ。

そこで「あれ、これ数理マジックもプログラミングできね?」

という発想に至ったわけです。

そして、極端な話をすれば、手品は言葉で理論化されているものも多く、ロボットでも手品ができる時代がすぐそこに来ているんじゃないか?と思いました。

45年の特異点問題が時折話題になる中、マジシャンは生き残れるのか?

今回はそのようなテーマのもと、まずはじめに①手品とITのシナジーについて

次に②IT化による”魔法”の消滅について

最後に③手品はどう生き残るのかについて

このような流れで進めていきたいと思います。

ちょっと長いので、先にまとめ

前提:IT化とは

IT技術の変革によって、産業構造、行政のあり方から、個人のライフスタイルまで、社会全体が急激に変化すること。

出典|ASCII.jpデジタル用語辞典

前提:マジックとは

奇術(マジック)とは、合理的な方法によって、観客の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることを目的とした芸能

手品とITのエナジーについて

  • スマートフォンなど、新しい手品の道具の発達
  • 情報機器の小型・精密化や、プログラミング、により手品の幅が広く
  • 映像技術、VR・ARの発展は最早手品?

IT化による”魔法”の消滅

  • 手品の発展の歴史は、魔法VS科学
  • 現代において、手品は種があるものとして見られる
  • でも、その種がわからないから面白い
  • IT化により、その種(=ブラックボックス)が見える化?

手品はどう生き残るのか 

  • 手品の伝統・芸術化、個性が光る手品を
  • ITでは追いつけない手品、特にスライハンド
  • むしろITを積極的に取り入れる。解決すべきは種明かし問題

手品とITのシナジーについて

シナジーなんてかっこいい言葉を使いましたが、要するにここで言いたいのは

IT技術によって、手品はどう(プラス方向に)変化するのか」ということです。

グローバル化、高齢化、IT化は今大学生の世代なら耳にタコができるぐらい聞かされてきた”時代の変化”ですが、その波は間違いなく手品の世界にも影響を与えています。

スマートフォンと手品

たとえば、一つ考えられるのは”スマートフォン”の登場です。

スマートフォンそのものを使って行う手品が増えたことは、通なマジシャンならご存知でしょう。

スマートフォンの電卓を使ったマジックや、コインが出てくるマジック用のアプリまで開発されています。

さらには、少し前にiPadを利用したマジックが話題になりましたよね。

このように、スマートフォンは”誰もが持つようになった”地位を持つことで、”トランプ”や”コイン”などの一つの“道具”として手品に使用されるようになりました。

このことは、IT化による手品の相乗効果、プラスの効果と言ってよいでしょう。

情報機器の小型・精密化

画像出所:フレンチドロップより

さらには、情報技術化が進み、通信機器がより小型化していくことで、恩恵を受ける手品の分野が多くあります。

たとえば、メンタルマジックを演じる方でしたら、電子機器を用いれば”何でもできちゃう”のはご存知でしょうし、実際にそういった商品がマジックショップで発売されています。

さらには、僕の中で衝撃だったのは、トランプ1枚1枚にチップが埋め込まれている商品の登場でした。

(気になる方は”インサイト マジック”でググってみてください)

まだまだ値段が高く、多くの人が手を出せる状態にはありません。

が、通信技術が発達すれば、より安価で、より簡易に、同じような商品が登場するかもしれません。

その時、我々はマジシャンはより大きな”不思議”を観客に提供できるようになるでしょう。

プログラミングと手品

そして、次はプログラミングと手品の相乗効果についてです。

みなさんは、アキネイターというWebアプリをご存知でしょうか。

実際にやってみればわかると思いますが、思い浮かべている人物・キャラクターを、データベースと複数の質問によって、魔人が言い当てるというサイトです。

まあ、これはWebサイトなので、観客からすれば

何かしらプログラミングしてるんだろなぁ“と思うでしょう。

しかし、Webの存在を隠して、質問を人間が行なったとすれば・・・

プログラミングを用いて”相手の思い浮かべている事を言い当てる”ESP現象が起こすことは可能である、ということになります。

さらには、手品はプログラミングと相性の良い技法がいくつか存在します。

それは、数理マジックをはじめとして、マジシャンズチョイスといった、論理や確率に関するものが挙げられます。

“トランプ”や”コイン”といった”道具”を使わない、メンタルマジックのような分野では、プログラミングを有効活用すれば、その効果は絶大なものとなるでしょう。

映像技術の発展

ここ数十年で、CGや動画編集の技術が向上したことは、FFやひと昔の映画を見ればお分かりでしょう。

Zack King氏は、この編集技術をうまくマジックに応用させたパイオニアです。

映像トリックはそもそもマジックと言えるのか?という議題に関しては、以下の記事で触れていますので、よろしければそちらもご覧ください。

VR・ARとマジック?

そして、映像技術の発展と共に、これからVR(仮想現実)AR(拡張現実)が発達すれば、手品にどのように影響を与えるでしょうか。

というか、そもそもVRやAR自体が手品・魔法みたいなものですよね。

手品の定義を引用すれば

奇術(マジック)とは、合理的な方法によって、観客の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることを目的とした芸能

この”合理的な方法”を”VRやAR”に置き換えれば、そのまま手品とでも言えそうです。とはいえ、あのごっついVRゴーグルを被って、目の前でコインが瞬間移動しているのを見ても、何だかなぁ・・・。

むしろ、自由に空を飛んだり、海を泳ぎ回ったり、普段行けないような所に行くことができるなど、VRやARが本物の”魔法”に近くなるのかもしれません。

脳科学の発展 相手の心理を画像化する

情報技術の発展とはテーマがずれるかもしれませんが、脳科学の発達により、相手の思っている情報を画像化する技術も開発されています。

今までの奇術史上、”相手の心理を読む”というのは永遠のテーマとされてきましたが、ある程度のレベルまで、科学によって解決できるようになってきたのです。

もし、この技術がより発展して、小さな機械で相手の記憶を読み取ることができたとしたら

(むしろ手品どころではなく、ディストピアの到来だと思うが)

手品は、また新しいステップを踏むことになるかもしれません。

IT化による”魔法”の消滅

さて、この小見出しも何だかカッコ良い表現を使ってみました笑

上の章ではIT化による手品への好影響を示しましたが

ここではIT化による手品の悪影響って何があるんだろう?というお話をしていきます。

この問題を考える際に使えるのが、魔法↔︎科学という二項対立の構造です。

この二項対立を考えるに至って、少しばかり手品の歴史を紐解いてみましょう。

手品の歴史っていつからなんだろう?

ターベルコースインマジックの第1巻、そのレッスン1「手品の歴史」の内容を見てみます。

マジックにおける2つの分野

古代においても、マジックは2つの大きな分野に分けられます。一方は、霊の世界との交信である占いや妖術のたぐいであり、他方は曲芸やスライト・オブ・ハンドだったのです. 後者は前者とは違って、人々の運命には無関係であり、娯楽の手段であるとみなされていました。しかしながら、スライ ト ・オブ・ハンドの芸人は、超自然の力を持っていると信じられていました。

他の文章では、ゾロアスター教やキリスト教をはじめとした宗教、古代ローマにおける予言、はたまた魔術や降霊術でさえ、”手品”によって説明されています。

つまり、古代において手品は超自然的なもの、本物の魔法とされてきたのです。

ターベルコース、レッスン1の最後は、以下の文章で締めくくられています。

近代におけるマジックは、古代におけるマジックから. 幾多の段階を経たものです。私達はいまやそれを超自然とか”黒魔術”などとはみなしてはいません。私達はマジックを未知なる何世紀もの試練を経た由緒ある芸術であり、もっとも娯楽性のある芸術であると認議しています。

つまり、古代まではマジックを、人々は超自然的なものとして捉えてきたが、近代以降、それは芸術として捉えられるようになった、ということを示しています。

さて、ここまでが手品の小史です。

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手品の”種”というブラックボックス

現代では、手品は超自然的なものではなく、一つの娯楽・芸術としてみなされています。しかし、手品が超自然的なものから、一つの芸術として変化した、その原因は何なのでしょうか

ターベルコースには以下のように記されています。

真の科学が発展するにおよんで、マジックは魔術的な進行から隠れ、一般の目にさらされるものとなったのです。

つまり、科学が進歩することによって、例えば錬金術が化学によって滅ぼされたように、もしくは占星術が天文学へと変化したように、超自然的なものは滅ぼされるようになりました。

ここに、上で述べた魔法↔︎科学という二項対立構造がみられるのです。

また、上の文にはまだ続きがあります。

しかし、秘密性から解き放されたとはいえ、人々の心の中には、いまだこれらの科学に対する超自然的な印象はぬぐい去られていません。

つまり、人は星座占いや血液型占いを信じるように、何か超自然的なものの存在を心のどこかで信じているのであり、そのことが手品の”不思議さ”につながっているとも言えます。

とりわけ、最近のメンタルマジック、メンタリズムなんかは

「この人ほんとに心を読めるんじゃないかな・・・?」という、超自然的な存在の貢献が大きいでしょう。

では、メンタリズム以外のマジック、例えば”カード当て”などはどうでしょうか?

“カードがトランプの山札の真ん中に入って、指をパチンと鳴らすと一番上に上がってくる”

この現象を、21世紀の私たちは”超自然的なもの”として捉えているでしょうか?

多くの人は「まあ何か種はあるんだろうけど、スゴイ!

つまり、不思議な現象が起きるが、そこには何かしらの”種=ブラックボックス”があって、そのブラックボックスの中身が見えない(=種がわからない)から面白い!

もっと簡単に言えば、現代の私たちは、種がわからないから面白い、という当然な結論に至ります。

IT化による、ブラックボックスの”見える化”

私たちは、手品には、何かしら現象が起こるまでのブラックボックスがあるから面白い、と感じるわけです。

しかし、情報化が進むことで、そのブラックボックスが、明るみに出ればどうなるでしょうか。

たとえば、上に述べた「トランプにチップが埋め込まれている」という情報が、多くの一般人に知れ渡ったらどうなるでしょうか?

たとえ、演じるカード当てのマジックが、チップを使用しないものであったとしても、観客からすれば

「どーせ、そのトランプ、チップが埋め込まれてるんでしょ~?」

なんて状況になりかねないわけです。

IT化が進むことで、つまり魔法↔︎科学という二項対立のうち、科学が力を持つようになればなるほど、手品の可能性は狭まっていく、ということになります。

チップの例だけでなく、映像技術が発展していけば、たとえYoutubeでどれだけ凄い手品を演じたとしても、観客の目には「それ、どうせCGなんでしょ」としか映らないかもしれません。

さらには、脳科学が発展して人の心を読み取る機械なんかが現れたら、それこそメンタリストは廃業でしょう。

このように、情報化が進むことによって、観客は簡単に種の推測ができるようになり(たとえその推測が間違っていたとしても)、その時不思議さは失われ、手品という芸術は崩壊するのです。

以上が、IT化が進むことによる、手品への悪影響となります。

手品はどう生き残るのか

これまで、IT化が手品に与える好影響、悪影響について触れてきました。

これらを踏まえた上で、どのようにすれば手品という文化は生き残るのか、私の考える具体例を提示してみようと思います。

手品の”伝統・芸術化”

一つは、手品を一つの”芸術”として昇華させることです。

“芸術”を、「独特の表現様式によって美を創作・表現する活動」とするならば

手品も、演者の個性を目立たせ、美を追求するようになれば、どれだけ時代が過ぎようとも、その位置を崩すことはなくなるでしょう。

(じゃあ、”美”って何なんだよていう方は、カントやバウムガルテンを参照に)

最近の例で言えば、京都の劇団のGEARなどは、手品を演劇に組み込むことで、”芸術”として手品をワンランク上のものにしていると思います。

GEARのマジシャンを見て、「あのマジックのタネってさぁ〜」と憶測するような観客は少数派でしょう。むしろ、演劇のストーリーと手品の持つ不思議性の組み合わせに、感動を覚えるはずです。

手品が、文芸や絵画、彫刻や音楽、演劇といった”芸術”といったレベルまで達した時、魔法VS科学というしがらみから解放されることでしょう。

絶対に見えないブラックボックス

もう一つは、どれだけIT化が進もうが、観客が推測できない種を使って手品をする、というものです。言い換えれば、絶対に見えないブラックボックスを用意するのです。

たとえば、洗練され尽くしたスライハンドによる手品は、思考が追いつきません。本当に上手なコインマンのコインは、目の前で完全に消えます。これを”科学”で説明することができるでしょうか?

何かやってるんだろうけど、わからん。不思議。

そう思わせるほどのスライハンドの力は、科学に打ち勝つことでしょう。

科学との共存

手品の伝統化は、科学VS魔法という構図からの逃避

スライハンドを極めることは、科学に対して真っ向から勝負を挑むこと

そうではなく、弁証法的な考えとして、IT技術をもっと手品に組み込んではどうか、という意見です。

たとえば、映像トリックはもっと流行ってもいいし、iPhoneアプリを使った手品ももっと増えてもいいんじゃないかと思います。

観客に”不思議”を提供できるのなら、メンタルマジックで”何でもできる機械”を使ってもいいのではないだろうか、とも思います。

IT技術を使って、より観客を楽しませることができるのなら、それに越したことはない、という考えです。

しかし、この考えには一つ、重大な問題がつきまといます。

それは、手品のタネ問題

たとえば、”なんでもできる機械”の存在が、多くの観客に知れ渡ってしまえば、この方法は不可能になります。

マジシャン全員が一丸となって、ブラックボックスを維持し続ける努力が必要となるのです。とはいえ、IT化が進めば進むほど、ITを使った手品のネタは拡散されやすいというジレンマも生じるでしょう笑

そこの辺りは、これからのマジシャンのモラルにかかっているとしか言いようがありません。

おわりに

手品とIT化というテーマにお付き合いいただきありがとうございました。

今度のマジックコラムは、手品と歴史、魔法VS科学の辺りをもっと掘り下げられたらなぁ・・・と思っています。

そして、最近は就活にも追われながら、手品のアプリ化ができないかなぁ・・・と目論んでいる模様。

なのでSwiftの参考書を片手にアプリ開発を勉強しているんですが、如何せん文系なので理解が遅い。

アイデアはあるんだけど、それを具現化できないというもどかしさ。

どなたか、手品をアプリ化しているorしようとしている人がいましたら、ぜひ声をかけてください!

参考リンク

マジェイアの魔法都市案内

手品を考えるためのフレームワーク

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