「あなたの手品は迷惑です」~ マジックハラスメント問題 ~

       
   

まとめ

マジックハラスメントとは

合理的な方法によって相手の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることで、本人の意図に関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること

マジックハラスメントが起こるのは

相手がマジックを見たくない時、観客に過度のリアクションを求める時、嫌がる観客にアシスタントを願う時

マジックハラスメントを起こさないためには

「相手が手品を見たいと思っている」「自然とリアクションが起こる」「無理な手伝いを要求しない」

マジックハラスメントという言葉を知っていますか?

久しぶりにマジックコラムの更新です。

今回取り上げたのは「マジックハラスメント」というお題。

アマチュアマジシャンの間では「それ、マジハラやろwww」という感じで使われていたりします。

けれど、その定義や意味を考えたことのある人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、マジックハラスメントという言葉の定義・意味から、マジックハラスメントが起きる状況と具体例、そしてどのような対策をとればいいのか、私なりの解釈を整理しようと思います。

マジックハラスメントという言葉は、どこで生まれたのか?

ところで、マジックハラスメントという言葉はどこから生まれたのでしょうか?

ためしにGoogleで5ページ目まで検索してみたところ、その発端とされるWebページを見つけました。

2005年、エキサイト・ブックスの中の『日刊!ニュースな本棚:非モテの文化誌』というシリーズ

その第21回目、demiさんというライターが書かれた記事に、以下のような文が残されています。

とあるバラエティ番組で「飲み会で嫌いなこと」というテーマでアンケートをとったところ、「マジックを見せられること、驚きを強要されること」が一位になったそうです。興味がなくても注目してあげないわけにはいかない、そもそもどこが驚きどころなのだかわからないとイライラしてしまう人も多いらしいマジック宴会芸。マジック・ハラスメント、略してマジハラという言葉が定着するのも時間の問題かもしれません。とはいえ、手品を見せるということでしか他人と交われない、そんな器用なんだか不器用なんだかわからない人もいるのです。吉行淳之介の短編『手品師』(『純愛小説名作選』収録)に出てくるのはそういう童貞青年です。

第21回 マジック・ハラスメントにご用心——吉行淳之介『手品師』の巻 より引用

吉行淳之介の短編『手品師』に対してコメントの中で、マジックハラスメントという言葉が生まれたみたいですね。

最近の事例では、女優の常盤貴子さんが、南日本新聞のエッセイで、以下のように使っています。

マジック鑑賞は苦手 万人がまじっく好きだと思ったら、大間違いなわけですよ。 確かにマジックというものは、とっても不思議で、一瞬のうちにパッと世界を 変えてしまう面白さはある、と思う。 だけど、それに対して「わぁ、スゴイ!」と言えない人種もいることに、 マジシャンたちは気づいているのだろうか。 マジックハラスメントと名付けちゃダメですかね?

では、詳しくマジックハラスメントの話をする前に、その意味と定義を明らかにしておきましょう。

マジックハラスメントの定義・意味

一言に定義すると言っても、情報がないのですから、どう定義すればいいのでしょうか。

それぞれ、単語を分解して考えてみることにしましょう。

マジックの定義

奇術(マジック)とは、合理的な方法によって、観客の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることを目的とした芸能である。

『トリック交響曲』泡坂妻夫 時事通信社 1981年

ハラスメントの定義

他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること

学校法人大阪医科大学より

これらをまとめると

マジック・ハラスメントの定義

合理的な方法によって相手の知覚を誤らせ、不思議の世界を体験させることで、本人の意図に関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること

となります。

なんだか、堅苦しい定義になってしまいましたが、次はさらに掘り下げて、どのような場面・状況でマジックハラスメントが起こるのかを考えてみようと思います。

どんな時にマジックハラスメントは起こるのか

その1:相手がマジックを見たくない時

マジックハラスメントが起こる状況として、最も大きな要因はこれでしょう。

例えば、合コンで急に一人の男性が「俺、手品できるんだぜ〜」と、それまでの空気をぶった切って手品を初めてしまうとどうなるでしょうか。

みんなで楽しめるゲームをしたいのに、手品なんて見たくない、マジックハラスメントが成立しますね。

その2:観客に過度のリアクションを求める時

相手がマジックを見たいと思っていても、マジハラは成立します。

その一つが、リアクションを求められる場合。

合コンの例で言えば、たとえ演じられた手品がつまらないものであったとしても

そのコミュニティの関係上、良いリアクションを返さないと駄目な場合があります。

他には、よくマジシャンが使うセリフとして

「拍手をお願いします」なんてセリフがありますが

面白くもないのに拍手を強要して、相手が不快に感じればマジハラにあたるでしょう。

その3:嫌がる観客にお手伝いを願う時

手品は、カードを選んでもらったり、ステージ上に参加してもらったり、お手伝いをしてもらう場面が少なくありません。

もちろん、アシスタントを進んで受け入れる人もいますが、反面、自分はステージに上がりたくないなど、様々な理由でお手伝いすることが嫌な人もいます。

にもかかわらず、場の雰囲気を使って「断れないお手伝いを要求すれば、マジハラが成立します。

また、似た状況下として「相手から何か物を借りて手品をする」こともあるでしょう。

人によっては、たとえ何も起きないと知っていても、記念の指輪や高級時計など、マジシャンに触られたくない物もあるでしょう。

 

以上、マジハラが起こる3つの状況をあげて見ました。

では、このような状況が起こりうる、のケースをみてみましょう。

マジックハラスメントの具体例

ケースその1:初心者の下手なマジック

手品をはじめたばかりの頃は、他人に見せたくて見せたくてしょうがありません。

それゆえ、人と会えばここぞとばかりにトランプを引っ張り出し、手品を見せます。

初心者であれば、期待のリアクションが返って来なければ「なんでこんなスゲー手品に驚かないんだよ!」と、不機嫌になる人も少なくありません。

けれど、相手からすれば別に見たくもない、そして初心者なのでレベルが低い、なのにリアクションを返さないと不機嫌になる

手品をはじめたて(特に中高生や、ご老人の方など)の場合は、マジハラが起こるケースだと言えるでしょう。

もちろん、こんな状況を乗り越えてマジシャンは腕を磨いていくと思いますが笑

ケースその2:一発芸でのマジック

日本という国は、一発芸でも持っていないと社会的に死ぬ国なのでしょうか。

宴会で何か一発芸を求められることが、多々あると思います。

モノマネなんかは滑りそうだし、手品でもしておこうかなぁ。

とまあ、一発芸で手品は非常に採用されやすい芸だと思います。

しかし、一発芸なんだから、そもそもクオリティは低いものになりがち。

上司からすれば面白くとも、同僚・部下からすれば全然面白くない、なんて状況はよくありそう。

合コンでのマジックも、ここに含まれるかもしれませんね。

ケースその3:サプライズとしてのマジック

サプライズのような、相手の知らないうちに驚かせる手品があります。

たとえば、ウォッチスティール(知らないうちに、相手の腕時計を盗む手品)なんかでは、観客はビックリするでしょうが、逆に不快感を与える可能性だってあるのです。

他にはストリートマジック(路上で突発的に見せる手品)も、相手が求めていないのに手品を演じてしまいがちな分野だと思います。

サプライズは相手が喜ぶものだと思いがちなもの。

これはフラッシュモブなんかにも通用する考え方かもしれませんね。

マジックハラスメントを起こさないために

では、どのようにすれば、マジックハラスメントを解消できるのでしょうか。

マジハラが起こる状況から考えれば、「相手が手品を見たいと思っている」「自然とリアクションが起こる」「無理な手伝いを要求しない」ことが、解消のための条件だと言えます。

じゃあ、そのために何をすればいいのでしょう?

相手に手品を「見たい」と思わせるには

相手に手品の興味を持たせること。

興味があっても、相手に時間の余裕がなければ諦めるべきです。

簡単なのは、相手から「見せて」と言われるまで見せないことです。

自然とリアクションを起こすには

何よりも、マジックのクオリティをあげることです。

お客さんが心の底から不思議で、感動するような演技をすれば、自ずとリアクションが返ってくるでしょう。

その意味では、拍手を一々求めるようなセリフは、禁句かもしれませんね。

無理な手伝いを要求しないためには

観客との信頼関係を築いておくこと。

そして、喜んで手伝いをしてくれる観客を選ぶこと。

 

これ以外にも、マジハラを起こさせない方法はたくさんあると思います。

重要なのは、独りよがりにならず、相手を「不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与える」ことがないようにするには、どうすればいいかを考えることです。

それができていれば、マジハラは解消されることでしょう。

おまけ:観客から手品師へのマジックハラスメント

最後に、これまでは手品師から観客へのマジックハラスメントを定義して考えてきましたが、その逆もあり得ると思うんですよね。

それは、観客から手品師へのマジックハラスメント。

具体例を言えば

「マジシャンなんだから鳩出してよーwwwポッポーwww」

「え、なんでも消せるの?じゃあ俺の手にある消しゴム消して見て」

「ちょっと俺にもトランプ混ぜさせてよ」

なんていうような、手品師に対する無理難題です。

知り合いのマジシャンは「観客に対する無理難題に全て対応するのがマジシャンだ!」なんて言っていましたが、魔法使いでない以上不可能でしょう。

一つの解決策として、観客にナメられないこと、その場の空気を支配すること、なんてものがありますが

それはそれで観客にストレスを与えているんじゃないかっていう話もあるんですよね。

まあ、この話題に関してはまたいずれ違う記事で触れることにしましょう。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

参考リンク

手品を考えるためのフレームワーク

Dr.ZUMAのお知らせ:思い込み

40才部ねお君のマジックブログ人気ナンバーワン!:常盤貴子「マジック鑑賞は苦手」

 

 

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