マンキュー経済学を噛み砕いてみる 「経済学者らしく考える」

今回は第2章の内容から

、今回はマンキューミクロ経済学の第2章から、前回同様復習問題の解答と、解説を中心に、噛み砕いて、より簡単に説明してみたいと思います。

また、理解が深まるかどうかはわかりませんが、今回からイメージが湧きやすいように各問にできる限り関連した画像を表示しようと思います。

科学者としての経済学者

問1 経済学はどういう点で科学的なのか。

問2 なぜ、経済学者は仮定を置くのか。

問3 経済モデルは現実をそのまま描写すべきか。

問4 あなたが生産要素市場や財市場で、他の人々とどのように関わっているか、説明しなさい。

問5 単純なフロー循環図で扱われていない、経済的な相互関係を挙げなさい。

問6 牛乳とクッキーをつくっている経済の生産可能性フロンティアを図示し、説明しなさい。この経済で飼われている牛の半数が病気で死ぬと、フロンティアはどうなるか。

問7 生産可能性フロンティアを用いて、「効率性」の概念を説明しなさい。

問8 経済学を構成する二つの分野は何か、それぞれの分野は何を研究しているか。

問1について

問1:模範解答

経済学、経済の仕組みに関する理論を冷静に構築し検証するという、科学的手法を用いている点において、科学的であると言える。

相対性理論を発見した、アインシュタインの言葉にこのようなものがあります。

ainshutain

「すべての科学は日常の考え方を洗練したものにすぎない」

経済学と聞くと、あたかも文系の学問のように思われがちですが、その研究方法は物理学や生物学と何ら変わりません。

世界のあらゆる現象の法則性を導き、それを実証する。

そんな科学的方法を取っている以上、経済学も科学である、といえるのです。

問2について

問2:模範解答

経済学者は、複雑な世界を単純化し、理解しやすくするために仮定を設ける。

問1で概説した「科学的手法」は、あらゆる現象の法則性を導き、実証する方法である、と言いました。

簡単な物理学であれば、実証は簡単です。

万有引力の実験をするのであれば、実験室であらゆる物質を落下させればよいのです。しかし、たとえばインフレを研究する経済学者が、実際に一国の金融政策を変えて、データを取るということは事実上不可能です。

天文学や進化生物学と同じように、世界が偶然に落としたデータをかき集めるしか、実証の手段がありません

経済学において、世界が偶然に落としたデータ、それは歴史を指します。

過去の様々なエピソードを用いて、仮定した理論を実証とは言えないものの、ある程度評価することはできるのです。

もちろん、歴史は実証の道具としてだけでなく、経済学の法則性の仮定を導く道具としても使えます。

ここで、仮定の役割、つまり「なぜ仮定を置くのか」という問が上の設問です。

たとえば、国際貿易の研究では、世界は2ヶ国しか存在せず、両国は2種類の財のみ生産する、と仮定することがあります。

実際には、世界にはたくさんの国があり、様々な財を生産していますが、仮定を立て、一度世界を単純化することで、より理解しやすくしているのです。

問3について

問3:模範解答

経済モデルは、現実をそのまま描写すべきではない。

というのも、あらゆる経済モデルも、現実を単純化することにより、理解を深めるために存在するためである。

jintaimokei

(人体模型は、人体をより単純化して、その構造を理解しやすくするためにある。)

生物学の勉強では、人体模型を使って解剖学の基礎を教えます。

人体模型は、人の臓器がどのように体の中に配置されているかを示したモデルです。

このような模型は、細かい血管まで再現してあるわけではありませんし、鮮明に色分けがなされているわけでもありません。

人体模型は、あくまで私たちが、人間の体の構造を理解しやすくするためのモデルなのです。

経済学においても、多くのモデルというものが存在します。

しかし、そのモデルが現実をそのまま描写してしまえば、本来理解を深めるために存在するモデルの意味をなしません。

経済モデルは、世界の経済の仕組みを説明するために、複雑な部分を捨て、抽象化されてわかりやすいものである必要があるのです。

問4、問5について

問4:模範解答

私がマクドナルドのハンバーガーを食べる時、生産要素市場においては、わたしはアルバイトをして、その労働力をマクドナルドに対して賃金と交換に提供している。

財・サービス市場においては、マクドナルドはハンバーガーという財を、わたしに対してお金と交換に提供している。

問5:模範解答

フロー循環図では、政府の存在を扱っておらず、そのため政府と企業の間、政府と家計の間の経済取引が省略されている。

税金がその代表的な例である。

経済は、購入、販売、労働、雇用、製造といった、様々な活動を行う人によって構成されています。

フロー循環図とは、意思決定者を企業と家計だけに絞り、単純化した視覚的な経済モデルです。

ちなみに、家計は一般家庭のことと考えて差し支えありません。

企業は、労働、土地、資本といった様々な投入物を用いて、財・サービスを生産します。

これらの投入物のことを、経済学では生産要素と呼びます。

家計は生産要素を所有しており、企業の生産する財・サービスを全て消費するものとします。

家計と企業は、2種類の市場で関わりあいます。

1つは、財・サービス市場

ここでは、家計が買い手で、企業が売り手です。

マクドナルドがハンバーガーを売る売り手だとして、私たちはハンバーガーを買う立場です。

2つは、生産要素市場です。

ここでは、家計が売り手で、企業が買い手です。

マクドナルドで私たちが働くことは、マクドナルドに対して労働力という投入物を売っているのであり、マクドナルドはその労働量を賃金で購入しているのです。

IMG_6994

(図:マンキュー経済学Ⅰミクロ編 p.37より引用)

図のフロー循環図に、2つのループがあるのがわかるでしょうか。

それぞれ内側のループと外側のループがありますが、それぞれに意味があります。

内側のループは、投入と産出のフロー、流れを意味しています。

家計は、所有する労働力、土地、資本といった投入物を要素市場で企業に販売します。

企業は、それらの投入物を用いて財・サービスを生産し、家計に販売します。

つまり、投入物から財・サービスがうまれる循環を、内側のループは示しています。

対して、外側のループは、対応するお金のフロー、流れを意味しています。

家計は、企業から財・サービスを購入するためにお金を払います。

企業は、そのお金をつかって、労働者の賃金などの支払いを行います。

つまり、企業と家計の間の、お金の動きを示したものが、外側のループなのです。

このフロー循環図は、経済を示す非常に簡潔なモデルです。

しかし、企業と家計以外の意思決定者、たとえば政府や他国の存在を省略しています。

なので、税金や国際貿易について考える時は、別のモデルを使った方が理解がしやすいでしょう。

しかし、簡潔単純であるがゆえ、このフロー循環図は様々な現象に応用することができ、経済学を考える時の重要なモデルの1つといえるのです。

問6、問7について

問6、7:模範解答

スクリーンショット 2016 02 24 3 56 43

上の図は、牛乳とクッキーをつくっている経済の生産可能性フロンティアである。

経済の全てが牛乳とクッキーの2財を生産し、そのために全ての資源を投入していると考える。

牛乳の生産量が500の時、クッキーの生産量は300である。

牛乳の生産量が250の時、クッキーの生産量は700である。

この時資源を最大限活用していることとなり、効率性が高い。

この曲線の外側に位置する生産は、資源が足りないため行えない。

この曲線上に経済が位置するとき、両方の財は効率的であるといえ、曲線の内部に位置するとき、それは非効率的であるといえる。

いま、牛の半数が病気で死んだ時を考える。

スクリーンショット 2016 02 24 4 05 23

この時、牛乳の生産量は半減するため、牛乳の生産量の端点は250になる。

クッキーの生産は以前と同じく端点は800のままである。

結果、生産可能性フロンティアの点は、牛が死ぬ前に比べて内側へシフトする

上のフロー循環図は、図を使った最も単純な経済モデルの一つでした。

しかし、多くの経済モデルは数学というツールが用いられます

その中でも有名かつ単純なものが、生産可能性フロンティアというものです。

実際の経済では、多くの種類の財・サービスが生産されていますが、この経済モデルでは2つの財だけを生産していると仮定します。

さらに、その2つの財を生産するために、経済すべての生産要素を使用します

たとえば、いま経済はコンピュータと車だけしか生産しないとしましょう。

そして、経済のあらゆる生産要素(レアメタルといった原材料や労働力)を、この2財に全て使用すると仮定します。

その時、どれだけ生産要素を2つの財に配分するのか、その組み合わせを示したグラフのことを、生産可能性フロンティアと呼んでいるのです。

IMG_6999

(図:マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編 p.40より引用)

上のグラフでは、資源を全て自動車製造に配分した場合、1000台自動車が製造でき、また資源を全てコンピュータ製造に配分した場合、3000台コンピュータを製造できることを示しています。

もちろん、資源は限られているので、C点のように、生産可能性フロンティアの外側の点を、経済は実現することはできません。

あくまで、生産可能性フロンティア上の点や、内側の点でしか、実現は不可能なのです。

利用可能な希少な資源から、最大限の財・サービスを生産できている状態を、効率的と呼びます。

効率的であるのは、生産可能性フロンティア上の点の時です。

対して、グラフ上のD点のように、最大限の財・サービスを生産できたいない状態を、非効率的と呼びます。

非効率的であるのは、生産可能性フロンティアの内側の点の時です。

さて、この生産可能性フロンティアは、以前の記事で紹介した「経済学の十大原理」のうち

「人々はトレードオフに直面している」

「あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値(機会費用)である」という二つの原理を示しています。

いま、グラフ上のA点からB点に経済が移動した時のことを考えてみます。

この時、自動車の生産は100台増えていますが、その分コンピュータの生産を200台減らさなければなりません。

つまり、自動車を生産しようと思えば、コンピュータの生産をあきらめければならないのです。

また、こう考えることもできるでしょう。

コンピュータ200台を放棄することで、自動車を100台得ることができる。

両方を100で割れば、コンピュータ2台を放棄すれば、自動車を1台生産できる。

これは、自動車1台の機会費用が、コンピュータ2台であることを示しています。

ここから、自動車の機会費用が、生産可能性フロンティアの傾きに等しいことがわかります。

こう聞けば、生産可能性フロンティアは直線になるのではないか

という疑問が生じると思いますが、多くの経済学者は生産可能性フロンティアは曲線であると述べています。

グラフ上のF点のことを考えてみましょう。

F点では、ほとんどの資源をコンピュータ生産に使用しています。

この時、自動車をつくる熟練労働者といった労働力も、コンピュータ生産に使われることになります。

自動車をつくるプロなのに、コンピュータを無理やり作るわけですから、コンピュータの生産率は徐々に下がってきます。

いいかえれば、自動車をつくるための費用はどんどん小さくなっているのです。

つまり、自動車の機会費用は小さくなるので、傾きは小さくなります。

次に、グラフ上のE点をみてください。

この時、ほとんどの資源を自動車生産に使用しています。

自動車を多く生産するためには、多くの労働者、原材料という費用が必要です。

つまり、自動車の機会費用は大きくなるので、傾きは大きくなります。

このように、経済の様々な点において、2財の機会費用は変化するため、生産可能性フロンティアは曲線になるのです。

問8について

問8:模範解答

経済学は、ミクロ経済学とマクロ経済学から構成される。

ミクロ経済学は、家計や企業がどのように意思決定を行い、それらが意思決定にどのように関わりあうかを研究する学問である。

マクロ経済学は、インフレーション、失業、経済成長など、経済全体に関わる現象を研究する学問である。

経済学に限らず、様々な研究分野は、マクロ・ミクロのレベルで研究がなされています。

たとえば、生物学に関していえば、細胞生物学は、生物の最小単位である細胞を研究する学問であり、ミクロのレベルの研究であるといえるでしょう。

対して、進化生物学者は、動植物の長い年月による変化を研究する学問であり、マクロレベルの研究といえます。

しかし、進化生物学を、細胞生物学の視点から研究することも可能であり、両者は独立しながらも生物学という点で密接に関連しているのです。

kenbikyou

(細胞を研究する生物学は、マクロ生物学とでも言える?)

経済学においても、ミクロ経済とマクロ経済の二つの研究レベルが存在しており、密接に関連しています。

両者は独立した研究分野とされ、それぞれ独自のモデルを持っているのです。

政策アドバイザーとしての経済学者

問9 実証的主張と規範的主張の違いは何か。それぞれの例も挙げなさい。

問9について

問9:模範解答

実証的な主張とは、世界がどのようなものであるかを叙述しようとする主張である。

規範的な主張とは、世界がどのようにあるべきかを叙述しようとする主張である。

両者の違いは、その主張が正しいかどうかを、いかに判定できるかという点にある。

実証的な主張は、証拠を吟味することで肯定否定が可能であるのに対し、規範的な主張は事実だけでなく様々な価値観を必要とする点で両者は異なるのである。

いま、実証的な主張の例として

「最低賃金法は失業が増える原因になる」をあげる。

次に、規範的な主張の例として

「政府は最低賃金を引き上げるべき」をあげる。

前者は、最低賃金法を導入した時、失業が増えるという因果関係を主張している。

後者は、最低賃金を導入した方が、世界がよくなるという主張である。

前者の主張は、最低賃金の変化や失業率の変化の時系列データを分析することで、吟味が可能であるが、後者の主張はそれら事実だけでなく、倫理、宗教、政治哲学といった価値観が必要になる。

この点において両者は異なるのである。

実証的な主張と、規範的な主張との区別を、忘れてはいけません。

経済学という学問のはじまりは、全て規範的な主張から生まれます。

どうすれば社会を改善できるのか、その目標から研究がはじまるのです。

経済学の多くは実証的な主張であり、その時の経済学者は科学者です。

対して、規範的な主張をする時、経済学者は政策アドバイザーとして話しているのです。

なぜ経済学者の意見は一致しないのか

問10 経済学者たちが、政策立案者に、対立する内容のアドバイスを提示するのはなぜか。

問10について

問10:解答

経済学者たちが、政策立案者に対立するアドバイスをすのには、2つの理由がある。

1つは、世界の仕組みに対する見方が実証的諸理論のなかで分かれており、どれが妥当性を持つかについて意見が一致しないためである。

2つは、価値観が異なるために、政策が達成すべき目標について規範的な考え方が異なっているためである。

経済学者たちは、所得税を多くするべきか、消費税を多くするべきなのか、その答えを巡って対立しています。

消費税を増やすべきという人は、所得に税がかからなくなり、結果家計が貯蓄を増やすと主張します。

貯蓄が増えれば、生産性と生活水準が急速に成長すると考えるのです。

一方、所得税を増やすべきという人は、所得に税がかからなくなったところで、家計の貯蓄が増えることはない、と主張します。

tairitu

( 人が対立するのと同じように、経済学者も同じ?)

このように、税制の変更に関して、貯蓄がどのように変わっていくのかという、一つの命題に対して、そもそも異なる実証的な見方をしているので、意見が対立するのは当たり前なんですね。

また、価値観が異なれば、規範的な主張がことなります

価値観というものは、その人の育った環境によって大きく左右します。

「世界がどうあるべきか」に対して多くの人が異なる意見を持っている以上、経済学の意見が対立するのは当たり前のことなのです。

おわりに

今回で第2章の内容をほぼまとめ終わりました。

経済学は、その他多くの科学と同じように、単純なモデルを使って、経済の仕組みを解明する学問だ、ということですね。

その単純なモデルの例として、フロー循環図と、生産可能性フロンティアが出てきました。

両方とも、高校生の教科書に載っているような簡単なものですが、簡単であるがこそ応用性が高いんでしょうね。

他にもミクロ経済とマクロ経済の違いであったり、実証的主張と規範的主張の違いなど、簡単ではあるけど、いざ聞かれれた時に困る内容なので、しっかり頭に叩きこみたいと思います。

最後に、参考文献や参考リンクを貼って終わります。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

参考文献・URL

ここまで噛み砕かなく、もっとサラッと経済学の基礎を学びたい人へどうぞ。

高校生でも数時間あれば読破できると思います。

『OUTPUT保管庫 マンキュー経済学 ミクロ編 第3版 第2章 復習問題』

違う方の解答まとめ。問6で、クッキーには牛乳を使用するので、牛が半分死ねばクッキーの生産量も半減すると書いてあります。

ググってみたら、牛乳を使わないクッキーもあるみたいなので、難しいところですね笑

マーガリン使えばいいじゃない()

名古屋大学 経済原理 講義スライド

明治学院大学 「経済研究の基礎」講義

生産可能性フロンティアでググったら落ちていたPDFの資料です。

東京経済大学 生産可能性曲面の図示

今回の講義での生産可能性フロンティアは、生産物を2財に限定していますが、生産者が3人、生産物が3つになった時のグラフについて考察しているPDFです。

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