SF小説の傑作『新世界より』を読み終えたのでレビュー

       
   

貴志祐介さんの傑作『新世界より』を読んでみました。

高校時代の友人と飲み明かし、終電を無くしてとぼとぼ歩いて帰ったら風邪をひきました。

風邪をひいて冬休みの最後を迎えてしまい何とも言えない・・・

この冬休みでやっと長編小説を読み終えたので、その書評を書いてみます。

まずは見たことのない人のためにあらすじを書いて、その後自分が思うことをつらつらと書いていきます。

最後に他の方の意見やアニメ版、漫画版との比較なんかにも触れていますので、気になる方は目を通してみてください。

物語の本筋には触れないように書きますが、勘の良い人にはわかってしまうかも、ということでネタバレ注意です笑

『新世界より』のあらすじ&貴志祐介さんについて

『新世界より』のあらすじ

Wikipedia先生のストーリー紹介がうまくまとまっていたので引用します。

1000年後の日本。人類は「呪力」と呼ばれる超能力を身に着けていた。注連縄に囲まれた自然豊かな集落「神栖66町」では、人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役し、平和な生活を送っていた。その町に生まれた12歳の少女・渡辺早季は、同級生たちと町の外へ出かけ、先史文明が遺した図書館の自走型端末「ミノシロモドキ」と出会う。そこから彼女たちは、1000年前の文明が崩壊した理由と、現在に至るまでの歴史を知ってしまう。禁断の知識を得て、早季たちを取り巻く仮初めの平和は少しずつ歪んでいく。

これ以上Wikiを読むと、ほぼほぼネタバレが書かれているので注意です笑

ジャンルとしてはSF作品と呼べるのでしょうか。しかし、文庫版の解説にも書いてある通り、プロットはミステリー、モチーフは伝奇とファンタジー、クライマックスはモダンホラーと戦争アクションと、あらゆるジャンルの内容が組み込まれています。

言うなれば、SFが好きな人はもちろん、ミステリー小説が好きな人、オカルトや民俗学が好きな人、ジブリに出てくるようなファンタジーが好きな人、殺人鬼に追いかけられるようなホラーが好きな人、そして恋愛小説が好きな人、かなりの人に好まれる作品であるとともに、あらゆるジャンルへの視野を広げてくれる作品でもあると思います。

ちなみに私は、SFが好きで、ミステリーが好きで、かつオカルトもファンタジーもホラーも好きだったので、あらすじを見た瞬間に一瞬で「読みたい!」と思いました笑

1000年後の日本、このワードだけで胸の中から溢れるワクワク感が止まりません。

そして「呪力」という超能力を自分が持っているならどうするだろう、これは皆さまお馴染み「ハリーポッター」シリーズの魔法を使えたらどうするだろう、そんな希望を体現してくれるものでもあります。

そして「神栖66町」に住む早季達の住む世界は仮初めの世界で、彼女達の成長とともにその陰謀論とも言えるべき謎が解き明かされていく・・・

大まかなあらすじと言えばこんな感じでしょうか。なんか全然あらすじ紹介できてない気がする笑

貴志祐介さんについて

ここで『新世界より』の作者である貴志祐介さんについても軽く触れておきたいと思います。

貴志祐介さんは大阪出身で、京都大学(賢い!)卒業後、保険会社に勤めました。大学在学中に小説を投稿していたそうですが、後保険会社にを退職、執筆活動に専念することとなります。

彼が書く作品として多いのがホラー作品。それも人間の欲望や狂気、詰まる所の人間の「キタナイ」所を描くのが非常に上手です。

最近映画化され有名になった『悪の教典』も、彼の作品が原作となっている、と言えばわかりやすいかもしれませんね笑

もちろん『新世界より』にもそんな人間のカルマが存分に散りばめられていて、読めば読むほどどんどん暗い気持ちになっていきます笑

さらには、文一つ一つから感じ取れる博識さも彼の魅力のうちの一つです。

そんな表現あったんだ!と思わせてくれる表現が1ページに1つは出てきますし、ホラーの場面では脳内でまるで自分が追い詰められているかのようなビジュアル性の高い文章を書いています。さらには過去の回想シーンを太字で表現する表現技巧、専門知識を多く持っているからこそ書ける物語の設定など、言い出せばキリがありません。

『新世界より』を読み終えたので、次は違う作品、『黒い家』に挑戦しようと思っています笑

この作品のテーマとは?

この作品は見る人によってかなり多くのことを考えさせてくれる作品だと思います。

そんな中で、私が一番感じ取ったのは『差別』でした。

宗教、同性愛、性別、肌の色、民族・・・

数えることのできない差別というものが現代社会には存在します。

このような問題を作品で生々しく描くのは道徳上難しいけれども、1000年後の日本、しかも呪力やバケネズミといった架空の世界の中でならば、それらをうまく表現することも可能です。

差別はダメ、そう一言で言いますが、実際に社会は差別で溢れかえっていますし、そんな社会は永遠に繰り返されていくでしょう。

全く同じことが、『新世界より』の中でも描かれています。

サイコパスについて

『新世界より』の作中で悪鬼という存在が登場します。

これは同類である人間を見境無く殺す、というより殺人が一種の快楽になっているというもの。しかも、呪力という超能力を持っていることと、愧死機構から誰も悪鬼を殺すことができない、という設定です。

これを見た瞬間に頭の中で『サイコパス』というワードが思い浮かびました。

現代社会でも、無差別殺人、母が子を殺したり、子が親を殺す事件が後を絶ちません。

そういう人間がもし『呪力』のような力を持ったら、我々では立ち向かうことができないような『力』を持ってしまったとしたら・・・

そんな警告も『新世界より』は伝えようとしてくれたのかもしれません。

『呪力』が自分にとってはとても魅力的だった

この作品で重要になってくるのが『呪力』という単語。これは、自分の意識したものであれば、何でも起こすことができる、言わば超能力のようなものです。

例えば、火をつけたいと思えば、実際に火がメラメラと燃えているのをイメージしさえすれば、その現象が起こるというもの。

超能力系の作品って数多くありますが、その超能力がなぜ起こるのか、そこまで踏み込んでいる作品はそう多くない気がします。

イメージするだけであらゆる現象を起こすことができる・・・

これは限りなく『神』に近い存在なのではないか、実際作中に登場する下等生物バケネズミは呪力を使える人間達を『神様』として崇め奉っています。

たとえばハリーポッターでも『魔法』という呪力に似た能力がありますが、魔法を使うには呪文も必要で、杖も必要なのです。

で、趣味でマジックをやっている私にとっては、これが凄い魅力的だったわけです。

マジシャンの中には『マジシャンは魔法使いを演じる』なんて言葉がありますが、今までイメージしていたのは「ハリーポッター」の世界観でした。

つまりは杖を振って呪文を唱えてはじめて不思議な現象が起こるわけです。

それが、頭の中でイメージするだけで不思議な現象が起こるとすればどうでしょう?

呪文も、杖もいらない。まるで神様のような力。

この世界観は間違いなく私の中のマジックに対する価値観を変えました。

いわば『マジシャンは神様を演じる』と言えばいいのでしょうか笑

こんな感じで、『呪力』は『魔法』とはまた違う力の可能性を私に提示してくれたわけです。

『無意識』について深く扱っている

もう一つ言いたいのが、この作品は人間の『無意識』について多く触れています。

作中に出てくる

人間の意識は氷山の一角

というセリフは、とても自分の中に響きました。

自分が思っていることや考えていることは、自分の中のほんの一部なのであって、それよりももっと大きなもので自分は構成され、動かされてる、つまりは無意識に自分は動かされてるということです。

ちょうどこの作品を読んでいる時にコールドリーディングや催眠術について勉強していたので、この無意識についてより勉強してみたくなりました。

実際、現代文入試の時には嫌いで嫌いで仕方なかった河合隼雄の本をわざわざ購入して読むぐらい。

で、無意識というのは思った以上にあらゆる分野に絡みついてくる問題だということに気づきました。

『新世界より』は、意識と無意識の関係について考えることのきっかけを与えてくれる作品とも言えるでしょう。

小説版、アニメ版、コミック版の違い

実は小説を読んだと言いながら、アニメ版もコミック版も読んでしまいました笑

そんな感じでどハマりしてしまった私なりの、それぞれの特徴をまとめてみます。

小説版

小説版のメリット

細かい設定や心理描写が、貴志さんの文によって細かく表現されている。

自分の中でキャラクターや情景を想像できる。

自分の中で想像、創造した世界なので感動が大きい

小説ならではの表現(フォントによる表現、叙述トリックなど)が楽しめる

なんども気になる所を読み直せる

小説版のデメリット

長い。合計1000p以上。活字に慣れていない人はしんどい。

出てくる単語、表現がけっこう難しいので、気になる人は気になる。

 

アニメ版

アニメ版のメリット

動画で表現されるのでイメージが湧きやすい

声優や自然の音楽など、音という表現が増える

小説に比べてスイスイ話が進む

アニメ版のデメリット

どうしても受け身になりがち。与えられた作品になるため想像力に欠ける。

時々作画崩壊?らしい所があって、かなり辛い

コミック版

コミック版のメリット

より手軽に読める。絵もかわいい。

絵が綺麗なので、イメージもしやすい。

漫画ならではのオリジナルストーリーやオリジナルキャラ、さらにはオマケが面白い。

コミック版のデメリット

性描写がモロなので、苦手な人には苦手かも(自分にとってはメリット)

小説、アニメ、漫画 おすすめなのは・・・?

さて、小説、アニメ、漫画と3つ挙げましたが、初めに見るとしたら私はアニメ版をお勧めします!

総25話と2クール分のかなりのボリュームなので、途中ダレる所もあるかもしれませんが、一番『新世界より』を楽しめる素材がつまっていると思いました。

まず、キャラ達のイメージが非常に細かく再現されているということです。『新世界より』のアニメ制作会社さんはA-1 Picturesという、『あの花』なんかを手がけた実力アニメ制作会社。

第1話から非常に綺麗なキャラと、情景が描かれており、特に日本の田園風景はノスタルジックな感じをうまく引き出してくれています。

そして上でも述べた『呪力』がほぼ完璧と言っていいほど上手く表現されていること。

声優達による心のこもった演技など、アニメならではの表現が多いです。

そして何よりアニメで重要なのが、タイトルにもある『新世界より』の音楽が実際に流れているということ。

この作品では、ドボルザークによる交響曲第9番ホ短調『新世界より』の第2番、日本では『時き山に日は落ちて』、アメリカでは『Goin’ Home(家路)』が頻繁に使用されています。

小説・コミックではこの音楽の説明はあるものの、音楽を流すことはできません。その壁を乗り越えているのが唯一アニメなのです。

 

この音楽はアニメの冒頭から、最後の最後にまで流されますが、曲を聴くたびに胸を貫かれるかのような、そんな切ない気分になります。

この曲を知っている、聞いているのと、そうでないとでは、感動の大きさにかなりの差ができるんじゃないかなぁと思います。

というわけで、初めて新世界よりを見るならアニメ版がお勧めです!

あえてランキングをつけるとしたら・・・

アニメ ≧ 小説 ≧ コミック という感じでしょうか笑

 

さいごに

というわけで、『新世界より』のレビューはこの辺りで終わりにしておきます。

久しぶりに読み終えた後に、「よかったなぁ・・・また読もうかなぁ」という作品に出会うことができました。

もっともっとこういった作品に出会えていけたなら、ということで色々な本を読んでいきたいのですが、明日から学校がスタート・・・

さらんは後にコンテストやらテストが控えているので、当分長編を読み終えるのには時間がかかりそうですorz

ちなみに今は貴志祐介さんの『黒い家』を読んでいるので、また読み終えたら感想でも書こうかな、と。

みなさんもお勧めの本やアニメ、映画などあれば是非教えていただけると幸いです♪

それでは最後までご覧頂きありがとうございました!

参考リンク

新世界より テレビ朝日

アニメ版のあらすじだったり、著名人らによる考察など

いつ見ても『偽りの神に抗え』というキャッチコピーはすごいと思う

新世界より wiki

wikipedia先生。ネタバレ注意。

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