マジックの種明かし問題について一言二言三言

種明かし問題について言及

マジック界では度々種明かしに関する問題が話題にあがります。趣味で手品をやるのであれば、「種明かし問題」を避けては通れません。

最初に法律の側面からマジックの「種」についてまとめ、次に種明かしの範囲について触れます。問題となりやすい種明かしの場所を挙げながら、種明かしをする人ついて触れます。最後に、それらを踏まえた上で私なりの解決案を提示します。

マジックの種と法律

マジックの種を法律で守ることができないのか、法律でどこまでマジックの種を守ることができるかについてです。著作権と特許、不正競争防止法についてです。

種の著作権

マジックの種に著作権があるのか、という話。

結論から言えば、マジックの種に著作権はありません。

マジックの種を構成するものとして、手順や技法などがありますが、ほとんどが「アイデア」由来です。

著作権は「文章・講演・演技といったものを通じて個人の思想や感情を表現したものに対し、その固有性を尊重するもの」なので、元の「アイデア」は保護されません。

もちろん、著作物の文章( レクチャーノートやDVD )をそのまま引用して他人に譲渡、言いふらせば、複製権や口述権に反します。

演出の著作権

著作権における上演権の側面から考えます。著作権における上演権とは「脚本を舞台等で上演したり、音楽などを演奏したり、または市販CDを再生したりして、公衆に見せたり聞かせたりすることを独占する権利」のことです。

セリフや衣装、演技構成をまとめた脚本があれば、その脚本に従った演技は保護されます。しかし、公衆という言葉の基準が曖昧なので、友達個人までになら見せても大丈夫、ということになっています。

もう一つ、著作権は「公表された著作物は、営利を目的とせずかつ料金を受けない場合において、公に上演し、演奏し、口述し、もしくは上映することができる。」との規定があることから、「お金をもらわない」とすれば、その脚本(公表された著作物)であろうと、その演技を保護することはできません。

“営利を目的としない”部分も曖昧です。本業はあくまでバーで、そのおまけとして手品を見せている場合はどうなるんでしょうね。

特許と不正競争防止法

マジックの種で特許を取るという方法もあります。マジック道具を取り扱う会社テンヨーなどは特許を持っています。

けれども、特許は「有用な発明をなした発明者またはその承継人に対し、その発明の公開の代償として、一定期間、その発明を独占的に使用しうる権利」なのであって、結局は種を公開してしまいます。(特許庁のホームページに行けばテンヨーの商品の概要を誰でも見ることができます。)

種の公開を防ぐことはできませんが、種を守ることはできます。特許庁の文章を読んでまで種明かしする人も少ないでしょうし、パクられることも減るでしょう。マナーの悪い人の手に届きにくくなるのは確かです。

次に、不正競争防止法という法律を見てみます。

これは「営業秘密や営業上のノウハウの盗用」などを禁止した法律であって、ここで言う「営業秘密」とは「事業活動に有用な、技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」です。

営業上とあるのでマジックを仕事として扱っている人にしか適応されないことと、公然に知られていない(=どのマジック市場にも出ていない)種しか扱えないので、限界はあります。

法律の限界

法律で守れるマジックの種の範囲をまとめておきます。

  • 著作物(レクチャーノートやDVD)の内容をそっくりそのまま公開している種明かしアウト
  • 「脚本」があれば、営利目的の種明かしは防げる
  • 特許を申請すれば、公開されるが、使用を制限できる
  • 営業上で使われるマジックの種(公然に知られていないもの)であれば、盗用は防げる

種明かしとは

自分の金で買ったアイデアを明かしていいか

世の中にはマジックの種が大量に売買されています。ひと昔前はデパートのマジック売り場で実演を見てから買って、ディーラーの人に教えてもらう、もしくは少ない書籍・ビデオから勉強するしかなかったそうです。中には「種明かしをしない」という契約書を書かなければ購入できない所もあったとか。

しかし、インターネットの登場によりオンラインショップが出現し、誰でも気軽に、手に入れようと思えば海外の情報まで手に入れることが可能になりました「お金を払えば種が手に入る」時代です。

問題は「自分の金で買ったアイデアを明かしていいか」ということになりますが、法律で取り締まることができない以上、一定数「買ったアイデアなんだからどう使おうと勝手」と思う人がいることは避けられないでしょう。

けれども、マジックの種が金銭で取引されることはマイナスな点ばかりではありません。高い価格設定はマジックの種を守ると言えます。何万円もする種を買う人はそもそもマジックに思い入れがあると思うので、明かそうとする人は少ないでしょう。逆に価格の安い種はそれだけ多くの人の手に渡りますし、「安いし、いっか」という気持ちですぐに種を明かされてしまいます。

教育との兼ね合い

種明かしをする対象について、「マジックを覚える気があるか」それとも「マジックを覚える気がないか」という基準があると思います。

前者はマジック対する興味が強い人達のことです。彼らに教育を施せば、将来日本を代表するプロマジシャンに育つかもしれませんし、誰もが思い付かないような新しいマジックが生み出されるかもしれません。

逆に後者は、単に自慢したい、お金になる、そういった気持ちでマジックを学びたい人達のことです。彼らに教育を施してもマジック界に悪影響しか出ないでしょう。

種明かしが行われる場所

テレビ

テレビを製作する側としては、視聴率を上げてお金を稼ぎたいですから、種明かし番組は都合がいいものです。そこに有名になりたい、お金が欲しいと思うマジシャンが現れる構図が消えない限り、種明かし番組が無くなることはありません。

テレビの種明かしは、一気に不特定多数の人に種が知れ渡ります。後のYoutubeに比べて、なんとなくテレビをつけていた人にまで種が知られるわけですから、極めて悪質だと言えるでしょう。

加えて、マジックを見る側のマナーを低下という問題もあります。例えば、最近「マジックの種を見破れるか」という番組が作成されていました。こういった番組が増え続ければ「マジックは見破るもの」という考え方をする人が増えていきます。

Youtube

Youtuberの流行に伴い、マジックの種でえ再生数を稼ぐ人達が増えています。Youtubeの厄介なところは、誰でも気軽に動画でわかりやすく種明かしができ、かつそれを何度でも再生できる、という点です。

テレビでは、種明かしは番組の後半に発表されますし、録画していない限り、番組が終わって数日経てば忘れられます。

しかし、Youtubeでは種明かしのみ動画を作成することもできますし、いつ、どこでも何度でも再生が可能なので、繰り返し再生することができます。

テレビと違って不特定多数の人に公開されるわけでなく、少なくとも手品に興味のある人に向けて発信されるものであることは救いかもしれません。

SNS

最後がFacebookやTwitterを中心としたSNSです。SNSは拡散性がテレビやYoutubeの比ではありません。

TwitterでRTされはじめればもう止まりませんし、その瞬間何万人の人の目にマジックの種がばら撒かれることになります。

そして、SNSがコミュニケーションツールであるというその「気軽さ」から、種明かしも「気軽に」行えるようになっています。

種明かしをする人の心理

自己顕示欲を満たしたい

人は他人の知らない情報を多く持っていると自慢したがります。そんな所にちょうど良いのがマジック。マジックは「不思議」そのもの。誰もが「知りたい!」と思うもの。その情報を公開することで、自分が優位な立場に立てるならば・・・

自己顕示欲が強い人にとって、マジックの種ほど、この欲求を満たしてくれるものはありません。Youtubeで、特に低い年齢の人が種明かしをしているのは、この理由が大きいと思います。テレビで種明かしをしてまでも出たい、Twitterで、RTされればされたい、そういう気持ちが種明かしを生むのではないでしょうか。

儲かるから

お次の理由は純粋に「儲かる」から。人が興味を持つものには、それだけお金が発生します。テレビで種明かし番組をつくれば、視聴率が取れてお金が発生します。Youtuberが種明かし動画をつくれば、再生数が伸びて広告収入が入ります。お金さえ手に入ればいいと考える人がいる以上、種明かしをする人は無くならないでしょう。

種明かしへの対抗策&解決案

種明かしについての知識を得る

法律を知っておけば、守れる種もあります。種明かしをすることが一体どのような悪影響を及ぼすのか考えれば、気軽に種明かしをする人も減るでしょう。マジックをやる以上、種明かしについてきちんと学ぶ必要があります。

マジシャンが一致団結する

種を守る人が多ければ、種明かしをする人に対して批難を浴びせることも難しくありません。そのためマジック協会などの組織でマジックの種の保護に取り組む必要があると思います。

種明かしをする人たちを説得する

種明かしをする人を単に誹謗中傷するだけでは問題は解決しません。特に金銭的理由で種明かしをしている人たちに、納得してもらえるような内容で説得を試みる必要があると思います。

世間のイメージを変える

世間に対するマジックのイメージを変えなければなりません。マジックを「見破るもの」考えている人は少なくありません。演技の後「え?種明かししないの?」なんて言われることもしばしば。マジックをエンターテインメントとして、見破るものではなく楽しんでもらうものと認識してもらわなければなりません。

マジシャンの数を減らす

極論ですが、マジシャンの数を減らしてしまえば、マジックの種は守られます。

マジシャンになるための資格をつくるなどして、その数を制限し、さらにはその資格が無ければマジック用品が買えないという措置を取り、市場を縮小すれば種を守ることはできると思います。

参考

マジックラビリンス:オリジナリティと権利

マジックと法律に関して細かく洞察されています。この記事で多く引用させていただきました。

サイタ手品教室 マジックと特許

マジックと特許の関連性について書かれています。

プロの視点からマジックの種についての情報を得られます。

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コメント

  1. マジックピア より:

    最近種明かし動画に悩まされているマジシャンのマジックピアと申します。
    私自身、YouTubeへ動画を公開しておりますが、その全てが、HPへの誘導・HP内でのレパートリー紹介動画となっており、各動画の最後にはきちんと「マジックは不思議を楽しむエンターテイメント」と表記し、種明かしに関する質問や、コメント等も受け付けないスタイルで行なっております。
    このような動画の再生回数が伸びず、種明かしを行っている人の動画がチャンネル登録者数・再生回数共に急上昇。
    本当に止めていただきたいものですね。
    YouTubeのアカウント名でマジシャンと名乗るならば、種明かしはご法度だと思っております。・・・が、なかなかそうも行かないんですよね。

    • Terry より:

      マジックピア さん
      まず初めに、コメントありがとうございます。
      確かに、最近のYoutubeでの種明かし・解説動画は目を背けたくなるものが多いです。日本においてはユーチューバーの流行と共に増加したのでしょうか。海外においては、日本の種明かしが可愛く思えるぐらいマニアックな手品の解説動画がアップされていたりしますよね。ここから考えるに、残念ながら今後はさらに酷い種明かし動画の数は増えていくと思います。
      法的処置も取れず、またYoutubeのメインユーザーが種明かしを求める以上、この問題を解決するのは厳しい。
      Youtubeという市場で戦う場合、良くも悪くも手品に興味を持つ人口は増えると考えられるので、これまでとは違った切り口を見出せれば、チャンネル登録数。再生回数も伸ばせるのかもしれませんね。
      マジックピアさんのこれからの益々のご活躍を陰ながら応援しております。

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